抄録
前大脳動脈瘤は, 一般には膝部に発生し, 末梢部いわゆるsupracallosal portionに発生するものはまれである. そのなかでも大型の動脈瘤 (最大径12mm以上) はさらに頻度が少なく, われわれの症例を含め, 渉猟しうる限り4例のみであった.
一方, くも膜下出血に伴う神経原性肺水腫は, 発症直後に出現する場合が一般的であり, 発症後12時間以上経ってからのものは遅発性神経原性肺水腫と呼ばれ, ほとんど報告がなく文献的考察もなされていない.
今回われわれは, 上述の特異な2項目を有するくも膜下出血の症例を経験した. 原因となった動脈瘤は, 画像所見から解離性脳動脈瘤が示唆され, 全身状態がきわめて不良であったため, 血管内治療を選択した. これらに加え, 全身管理においては種々の集学的治療を行ったにもかかわらず, 患者は高度の脱落症状を残した.
われわれは遅発性神経原性肺水腫の原因として輸液の過量負荷を疑ったが, 最終的に原因は同定できず, 有用な文献的報告も得られなかった. 今後著者も含め, 脳神経外科医が遭遇しうる重要な病態であると考えられたため, 問題提起の意味をもって報告した.