脳卒中の外科
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特集 大型―巨大脳動脈瘤の外科治療
大型および巨大脳動脈瘤に対する順行性血流温存を基本としたわれわれの治療法
加藤 庸子佐野 公俊渡部 剛也小田 淳平井水 秀栄Rahul Mally早川 基治定藤 章代入江 恵子根来 真
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2009 年 37 巻 3 号 p. 156-161

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抄録

対象は過去16カ月間のクリッピングを行った大型動脈瘤45例のうち,largeタイプ40例,giant type 5例である.45例のうち8例はくも膜下出血発症,37例は脳ドックでの摘出術である.
当教室では手術難易度の高い大型動脈瘤に対して,できる限り自然の血行動態を保ちながら親動脈血管構築を行うことを目標としてきた.今回45例のクリッピング術のうち,特に内頚動脈瘤では血管内外科とタイアップし,retrograde suction decompression法により瘤の内圧を減らし安全に親動脈構築が可能であった.呈示症例は,右large未破裂内頚動脈瘤でmultiple clips in tandem clippingの方法により親動脈の走行に沿い血管構築した.
もう1例はくも膜下出血で発症した大型右内頚動脈瘤でクリッピングの際に破裂部と後交通動脈との癒着が強く離困難であったため部分的な内頚動脈の血管構築にとどめ残留部はただちにコイル塞栓術を行った.
親血管内腔の狭窄や分枝,穿通枝閉塞の有無に関しては,神経内視鏡,超音波ドップラー,術中DSA,術中ICG video angiographyによる評価を行った.結果は,脳ドックで発見されたクリッピング術37例ではgood recoveryが37例であり,くも膜下出血発症の8例ではgood recoveryが6例,mild disabilityが2例であった.
治療難易度の高い大型動脈瘤も可能な限り自然の血行動態を維持することが望まれることから血管内外科の協力のもと,根治できた例をあげその手法につき述べた.

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© 2009 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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