2023 年 51 巻 6 号 p. 490-496
内頚動脈に発生した動脈瘤の直達術において近接する穿通枝の虚血を回避するための対策について報告する.対象は2012-2021年に当施設で直達術を行った未破裂内頚動脈瘤のうち,後交通動脈起始部から内頚動脈先端部までに発生した161患者170動脈瘤で,平均径5.7mm,部位は後交通動脈分岐部101個,前脈絡叢動脈分岐部49個,内頚動脈先端部15個,内頚動脈C1部5個であった.手術ではシルビウス裂を広く開放し,多方向から動脈瘤と穿通枝を確認できるように術野を展開したうえで,動脈瘤を周囲から可及的に剝離して瘤の裏側も含め穿通枝の全走行を確認しこれらを温存する形でclippigを行った.全例で術中のインドシアニングリーン蛍光血管造影および運動誘発電位のモニタリングを行い,術後4日目のMRで拡散強調像にて虚血巣の出現を評価した.
術中破裂はなく,44手術(27.3%)で母血管の一時遮断を用いた.運動誘発電位の変化を6例(3.7%)で認めclipの修正を行った.術後症候性の虚血合併症はなく,全例modified Rankin Scale 0で退院した.術後のMR拡散強調像にて動脈瘤近傍の穿通枝領域の高信号を15例(9.3%)に認め,無症候性虚血が比較的高頻度にみられた.確実な手術手技と複数のモニタリング併用により症候学的には良好な成績が得られるが,画像の評価では成績改善の余地があると考えられる.