脳卒中の外科
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原  著
内頚動脈後交通動脈分岐部動脈瘤に対する脳動脈瘤頚部クリッピング術において近位動脈確保を行うためのMRI造影motion-sensitized driven-equilibriumの有用性 ─Preliminary study─
佐野 顕史久下 淳史近藤 礼皆川 大悟佐々木 康介山木 哲園田 順彦
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2024 年 52 巻 4 号 p. 272-278

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抄録

内頚動脈-後交通動脈瘤(internal carotid artery-posterior communicating artery aneurysm:IC-PC An)に対する脳動脈瘤頚部クリッピング術の際の動脈瘤近位血管確保の際には同部位の動脈硬化の評価が必要である.今回われわれは,MRI contrast-enhanced motion-sensitized driven-equilibrium(CE-MSDE)法を用いた動脈瘤近位血管評価の有用性を検討した.

対象は2019年1月から2023年3月までに開頭クリッピング術を受けたIC-PC An症例12例で,平均年齢は63.0±12.3歳(32-78歳),男性4名,女性8名であった.未破裂脳動脈瘤が10例,切迫破裂例が2例であった.動脈瘤の平均サイズは7.2±2.2mm,前床突起から動脈瘤近位頚部までの平均距離は4.4mm,平均手術時間は5時間10分であった.術前検査としてCT angiography,MRI CE-MSDE法を施行し,術中所見との比較を行い,その有用性を後方視的に検討した.

6例(50.0%)で,術中に頭蓋内内頚動脈(intracranial IC:iIC)に動脈硬化性変化を確認し,このうち1例(16.7%)に石灰化があり,この6例はすべてCE-MSDE法で陽性所見を呈していた.術中に動脈硬化を認めなかった6例中1例(16.7%)にCTで石灰化を認めたが,CE-MSDE陽性例はなかった.したがって,CE-MSDE陽性所見のiICの動脈硬化の予測における感度と特異度は,CTでは16.7%と83.3%であるのに対し,CE-MSDEではいずれも100%であった.

MRI CE-MSDE法はiICにおける動脈硬化性変化の予測因子となる可能性があり,IC-PC Anに対する手術戦略を検討する際に手術前に確認すべき所見の1つであると考えられる.

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