脳卒中の外科研究会講演集
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クモ膜下出血早期の意識障害の対策
-術前・術後持続脳室ドレナージの効果とshuntの適応-
塩原 隆造戸谷 重雄飯坂 陽一志澤 寿郎石田 吉亨
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1975 年 3 巻 p. 83-89

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抄録
破裂脳動脈瘤によるくも膜下出血の意識障害は, 出血, 血腫のための直接の脳傷害, 頭蓋内圧亢進, 脳血管攣縮のための脳血流低下, 脳浮腫等, 多くの原因が複雑に関与し合っている。 破裂脳動脈瘤再出血防止と同時に又, それ以前から, これらくも膜下出血の病態の改善に努めることが, 意識障害の回復と予後の向上を図る上には必要である。 pool & PottsはじめMcKisock,Hunt等は破裂脳動脈瘤の手術時期について, 術前のgradeの悪いものは手術予後も悪く, むしろ手術時期を遅らせるべきとの考えをもち, 一般にdown hill courseをとる例には手術を遅らせるとするのが現在の傾向かと思われる。
出血のための直接の脳傷害はその程度によって, くも膜下出血患者の予後をその初期で決定ずけるものであり, 重篤なものは保存的・手術的治療の範囲を超えるものもある。 しかしくも膜下出血では脳動脈瘤破裂のためのくも膜下腔への出血が, くも膜下腔での髄液の通過障害, 吸収障害, 更には脳室内血性髄液の髄液産生促進等のことからも, 急性の頭蓋内圧亢進を来たすことが知られている。 我々はくも膜下出血に限らず外傷性, 非外傷性頭蓋内出血では, 出血, 血腫による直接の脳傷害のための意識障害もさることながら, それに加えて髄液の循環障害, 吸収障害のための急性, 慢性の頭蓋内圧亢進による意識障害が更にオーバーラップし, 一層意識障害を増悪させていると考え, 脳室ドレナージを併用し, 脳室内圧をコントロールし, 頭蓋内圧亢進を低下させることによって良好な結果を得ているので報告する。
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© 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
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