2022 年 10 巻 p. 91-100
平成20年告示小学校学習指導要領より「言語活動の充実」が教科を貫く視点として位置づけられている一方,そこで目指されることが,言葉でわかりやすく伝える能力や論理的思考の育成へ傾倒しすぎることへの懸念もなされている。本研究では図画工作科における児童の命名行為と表現の様相を探ることを目的とする。研究方法は筆者が行った図画工作科の授業実践の分析である。児童が絵の具とパステルを使って色づくりをし,それを見て感じたことを命名する過程の考察を行った。その結果,児童は色づくりという表現と命名するという言語表現を互いに行き来し,ためらいや迷いも含みながら自身のものの見え方や感じ方をたぐり寄せ,意味を立ち上げていることがわかった。