本研究の目的は,社会的包摂(social inclusion)に着目し,多様性が尊重される社会や共生社会の担い手となる児童の育成を目指す小学校社会科授業を開発することである。社会科教育における位置付けは,学習機会,内容,目標,学習環境の視点から考えられるが,特に内容として取り上げることが重要である。その視点は次の3点である。①社会的包摂に関わる具体的なテーマや社会単位を明らかにすること。②社会的包摂(排除)に関わる社会問題の構造や要因を明らかにすること。そして,特に③包摂される側(当事者)の主体性や参加の構造(関係性)に着目すること,が重要である。本研究では,実際に第5学年の単元を開発した。災害弱者問題やインクルーシブ防災のまちづくりを取り上げ,障害の社会モデルの見方や災害発生に関わる社会構造や背景に着目させ,共助の大切さ,包摂される側(当事者)の主体性や参加に着目したまちづくりについて考えることができた。