2023 年 11 巻 p. 13-24
本研究は,小学校の教師教育者が行う「省察」(ショーン,2007)の実態を明らかにすることを目的とした。教師教育者1名を対象として,「省察」を促す「クリティカルフレンド」(Schuck, & Russell, 2005)の支援による「セルフスタディ」(ロックラン,2019)という研究方法を用いた2度のインタビュー調査から,次の4つの結果が得られた。1)前半及び後半で得られた「省察」カテゴリーは,教師教育者Aが「コーチのはしご」(三品,2017)の1段目から2段目へ,さらに,2段目から3段目へ登ることで見出された。2)三品(2017)の言う「評価の背後にある価値観,世界観といった枠組み」の構成は,前・後半を通して変わらなかった。3)教師教育者Aは前半のTT授業から教師Kと信頼関係を築き,相互に理解し合い教師Kへの支援をした。そして,前半も後半も似通った器械運動を扱った。これらの理由から3つの大カテゴリーの概念図の構成に違いが生まれなかった。4)後半のTT授業になって教師教育者Aが指導助言される教師Kの立場を理解し,これまでに気づかなかった「関わり方」に気づくようになった。このことによって,中カテゴリー「関わり方」内に新たな小カテゴリーが生まれた。