物理探査
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論文
秋田県大仙市・仙北郡美郷町にある払田柵跡内の旧河川範囲と流路
西谷 忠師高野 華澄松野 克俊児玉 準
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2007 年 60 巻 6 号 p. 477-487

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抄録

払田柵跡は城柵遺跡であり,この柵内に河川が存在したことを発掘調査が明らかにした。この河川跡は表面付近では30cm程度の深さを持つ最終段階の河川跡であり,地表から2m程度の部分には砂質土,その下には大規模な洪水氾濫時に形成されたと考えられる礫層がある。電気探査の手法によって,この最終段階の河川流路,および,砂質土や礫層から期待される旧河川敷を明らかにすることが本研究の目的である。発掘調査によって地下構造が明らかになった場所で,電気探査の水平探査,垂直探査を行い,比抵抗変化の特徴を把握した。この予備調査により,電気探査の垂直探査で得られる30Ωmの層が粘土層あるいは青灰色シルト層に対応していることがわかった。粘土層の上面が0.5~0.7mよりも急激に深くなっている地域を河川敷と考えた。電気探査の水平探査では電極間隔を3m~5mにすれば砂質土・粘土層の始まる位置が特定できることがわかった。全探査範囲の南北方向,東西方向で同様の検討を繰り返し行い,河川敷の範囲の推定を行なった。さらに河川敷内に位置する最終段階の河川跡は地山粘土層の上部の砂質土の上にあると予想される。予備調査の結果,最終段階の河川跡には粘土質の物質が含まれているため,地山の粘土層の比抵抗よりは高いが,周囲よりも低めの比抵抗を示すことがわかった。従って、全探査領域の測定値を検討して河川跡を推定する場合には,地表から1m前後までの範囲で比抵抗が60Ωmよりも低い部分を最終段階河川の流路とした。電極間隔を1m程度にした電気探査の水平探査も全探査領域における最終段階の河川跡推定に有効であった。推定した河川敷の南限と北限,最終段階河川の流路は発掘調査と一致した。また,この結果はハンドボーリングの結果とも良い一致を示した。

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© 2007 社団法人 物理探査学会
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