2007年3月25日に発生した能登半島地震により被災が見られた石川県穴水町において,表面波探査と小規模微動アレイ探査により浅部地盤構造の調査を行った。穴水町では多くの住宅が被害を受けたが,被害はK-NET穴水観測点(ISK005)の近傍の特定の地域に集中していた。この地震において,K-NET穴水観測点では,周期約1秒が卓越する800gal近い最大加速度が観測されており,このような強い地震動と住宅の被害の関連が注目されている。表面波探査と小規模微動アレイ探査による調査の結果,K-NET穴水観測点の周辺ではS波速度約60m/sの低速度層が深度10m近くまで分布しているのに対して,穴水駅東側の古くからの市街地では地表面付近からS波速度500m/s以上の高速度層であることがわかった。またK-NET穴水観測点の南側約50mにも高速度の領域が存在し,同観測点の近傍で基盤深度が急変していると推定された。探査により推定されたS波速度構造を確認するために,K-NET穴水観測点近傍でラム・サウンディング試験を行ったが,その結果は探査結果とほぼ整合した。このような浅部地盤構造の不整形性が地震動におよぼす影響を評価するために,差分法による数値シミュレーションを行った。その結果,基盤深度が急変している場所では局所的に地震動が大きくなる可能性があることがわかった。穴水町中心部で地震被害が集中しているのは,地表から深度20m程度までの浅部地盤構造が水平方向に大きく変化している場所の近傍であり,複雑な地盤構造が被害の集中をもたらした可能性が考えられる。