物理探査
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論文
中国地方の地震観測点を対象とした地盤卓越周期の推定方法の精度検証
神野 達夫三浦 賢治熊谷 千代志
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2008 年 61 巻 6 号 p. 533-543

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抄録

 地震動は表層地盤の影響を強く受けることから,地表における地震記録,あるいはそれから算出された計測震度などの特性を適切に解釈するためには,その観測点固有の地盤震動特性の把握が重要となる。本研究では,中国地方に設置されている県震度計,K-NET,KiK-netの観測点において微動測定を実施し,この結果と地震観測記録,ならびにボーリングデータを用いて,微動の水平動と上下動のスペクトル比(H/Vスペクトル),地震動H/Vスペクトル,1次元波動論に基づく伝達関数によって各観測点の地盤の卓越周期を推定した。そして,地表と地中で地震観測記録が得られているKiK-net観測点を対象に,地表と地中の地震動のスペクトル比による地盤卓越周期を基準として,それぞれの手法の地盤卓越周期の推定精度を検証した。微動H/Vスペクトル,地震動H/Vスペクトルの地盤の卓越周期の推定精度には大きな違いなく,誤差は16~18%程度であり,1次元波動論に基づく伝達関数による地盤の卓越周期の推定精度は,これらよりも低い。さらに,これらの結果を用いて各観測点の地盤卓越周期を推定した。中国地方の内陸部の地盤の卓越周期は0.3秒以下と非常に短いが,沿岸部では0.5秒以上の卓越周期を示す。特に比較的人口の多い都市部において1秒以上の長い卓越周期を示す地点が多い。また,推定した地盤の卓越周期とPS検層結果から算出された表層30m平均S波速度 (AVS30) の関係について考察を行った。両者の間には比較的良い相関が見られた。両者の関係式を導出し,その関係式を用いてAVS30を推定した。その精度は,国土数値情報から推定されるAVS30よりも高いという結果が得られた。

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© 2008 社団法人 物理探査学会
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