空隙や割れ目を含む岩石,および鉱物や割れ目の選択配向を含む岩石の地震波速度を求める方法を概観する。この種の問題では,弾性体のエネルギー変化から弾性定数を決める手法が一般的に用いられている。ここでは,この手法を理解するための準備として,弾性理論の基礎概念と弾性論における熱力学ポテンシャルの表記法を再確認した後,フックの法則や弾性定数を導く。これらの準備の後,異方性媒質における弾性定数の特徴を調べ,異方性岩石を伝播する地震波速度の特徴を調べる。地球科学で重要な異方性は横等方性(transverse isotropy:TI) であるので,TIについて手短に述べる。最後に,鉱物の弾性定数をもとに,集合体としての岩石の弾性的性質の記述方法,空隙や割れ目を含む岩石の弾性的性質を求めるためのモデル化の手法,およびモデル化に付随して定義されるクラックパラメータを扱う。