南関東地域における微動の連続観測記録を用いて地震波干渉法理論に基づいて推定された表面波のスローネストモグラフィ解析を行った。解析では,山中ほか(2010)による観測から得られる微動データを用いて各観測点間で推定されたグリーン関数の表面波のスローネスを基にして,南関東地域を0.125°毎のセルに分割し,同時反復法により繰り返し計算を行い,周期 2 から 6 秒の表面波群速度のトモグラフィマップを作成した。その結果,関東平野中央部や東京湾では群速度が小さく,伊豆半島や関東平野西端部では群速度が大きいことが分かった。解析結果と既往のモデルによる表面波の基本モードの理論群速度マップおよび理論分散曲線とを比較し,伊豆半島,関東平野西端部および相模湾地域に,両者の顕著な差異を確認した。既往の 3 次元 S 波速度構造モデルの妥当性を検証するために各セルでのトモグラフィ解析結果による表面波群速度分散曲線の逆解析を行った。トモグラフィ解析結果で差異が大きかった相模湾においては逆解析結果により既往のモデルよりも層厚が小さいことが分かった。また,既往のモデルでは地震基盤が露頭していると仮定されていた伊豆半島における堆積層の存在を示唆する結果を得た。