2011 年 64 巻 6 号 p. 381-387
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震の津波により,岩手県では6千余名の方々が犠牲となった。三陸沿岸で遡上高が30mクラスの大津波は過去115年で3度目であり,必ずやってくると想定されたものであった。これまで,津波浸水域マップの作成,住民への啓発活動など,様々な取り組みを行なって来たものの,多数の犠牲者が出たことについて,地元研究者の一人として忸怩たる思いである。「生業(なりわい)の再興」と「安全な町づくり」を柱とした岩手県の復興計画がまとめられたが,国の財政的支援が不確かで復興は進んでいない。発生から9ヶ月,人が流出し,町が崩壊する危惧を孕みながら,現地は厳しい冬の季節を迎える。非常事態との認識での腰を据えた国の支援が急がれる。