物理探査
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ケーススタディ
東北地方太平洋沖地震による石巻市桃生町の局所的な建物被害と微動H/V
小田 義也戸田 雄太朗
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2011 年 64 巻 6 号 p. 445-454

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抄録
 2011年3月11日に発生した2011年東北地方太平洋沖地震は,巨大津波の発生を伴い,関東から東北の沿岸部において甚大な津波被害をもたらした。その一方で地震動による被害は地震の規模や震度に対して比較的小さかった。宮城県石巻市桃生町においても地域全体で見ると比較的被害は少なかったが,ごく限られた数カ所で家屋の倒壊など深刻な被害が発生していた。この局所的な被害の原因を探るため,本研究では,桃生町を南北に縦断する東浜街道沿い約3.8キロの範囲において建物の被害調査と常時微動観測を行いそれらの比較を行った。被害調査の結果から各建物の被害程度をAからFまで6段階に分類したところ,310棟のうち被害が深刻なA, Bランクの建物は10棟(約3%)であった。そして,深刻な被害は桃生総合支所周辺の数カ所に限られていた。常時微動観測は調査範囲内の46地点で実施した。微動H/Vの卓越振動数は1Hzから4Hz程度まで幅があったが,被害ランクA, Bの地点では,微動H/Vの卓越振動数が2.5Hz以上であることが明らかになった。今回の地震で観測された加速度記録の多くが1Hz以上の短周期成分の卓越していたことから,2.5Hz以上の卓越振動数を持つ地盤において共振現象による増幅が生じた可能性が高い。ただし,卓越振動数が2.5Hz以上でも被害が小さい場合があるため今後詳細な検討が必要である。
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© 2011 社団法人 物理探査学会
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