物理探査
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論文
相互相関関数の振幅に着目した地震波干渉法のデータ処理に関する考察
地元 孝輔山中 浩明
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2012 年 65 巻 4 号 p. 237-250

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抄録
 これまで多くの地震波干渉法の研究において長期間微動記録の相互相関によって観測点間の波動伝播速度を推定しているが,地震波干渉法ではグリーン関数を合成できることが理論的に示されているため,本研究では相互相関関数の位相だけでなく,振幅の挙動について考察する。Tsai(2011)の理論的考察によれば相互相関関数の振幅のシグナル部分は地盤のパラメータのみによって決まるが,ノイズ部分は相互相関解析に用いる微動記録長の平方根に反比例する。そこで南関東地域で得られた半年間の微動記録によって求められた相互相関関数を検討すると,相互相関関数の最大振幅は各観測点間で固有の値をとり,ノイズの平均振幅は解析に用いる記録長の平方根に反比例し,理論と調和的である。また,ノイズの平均振幅は短周期成分ほど大きく,長周期成分ほど小さくなるべき乗則に従う。最大振幅もノイズの平均振幅と同様の傾向を示す場合があり,解析に用いる微動記録長が短いためシグナルが検出できていないためであると考えられる。このため相互相関関数の最大振幅とノイズの平均振幅の比較によってシグナルが検出できているか判断できる。このことを利用して地震波干渉法におけるデータ処理の影響を検討する。地震波干渉法において通常用いられる1ビット化処理は有用であるが,あらかじめ適当なフィルタ処理を必要とすることがわかる。また,長期間の微動記録を部分分割するときにはできるだけ短い長さで分割した方がSN比は向上する。最終的に得られる最大振幅は解析記録長によらず一定値を保つため,その値により地盤の減衰パラメータを同定できる可能性があり,最大振幅値の距離減衰について考察すると,短周期成分ほど減衰が大きいという妥当な結果が得られる。
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© 2012 社団法人 物理探査学会
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