2013 年 66 巻 4 号 p. 253-260
物理探査学会の前身である物理探鑛技術協会は1948年(昭和23年)に発足した。以来今年で65周年を迎える。これまで物理探査技術は,様々な社会のニーズに対応するため,研究開発や技術開発が行われてきた。エレクトロニクスやコンピュータ技術を取り入れることにより,現在では膨大なデータを取り扱うことができ,その結果三次元探査や四次元探査も可能となった。
東日本大震災以来,我が国のエネルギー政策は岐路に立たされている。その一方で,メタンハイドレートやレアアースなど新たな資源やエネルギーへの期待も高まっている。社会インフラ施設に目を転じてみると,笹子トンネルの天井崩落事故のように,老朽化による安全・安心への不安も顕在化してきている。深層崩壊・地すべり・ゲリラ豪雨による堤防の決壊など,災害も多様化してきている。さらに南海トラフ巨大地震や首都直下地震なども懸念される。
我が国を取り巻くこのような複雑な状況の中で,物理探査が貢献できることは何か,今どのように進むべきかを考えるために,4名の若手研究者・技術者によるパネルディスカッションを行い,10年後には創立75周年の節目を迎える物理探査学会の将来展望を議論した。4名のパネリストから,技術革新・ユーザーの視点・人材育成・持続可能社会というテーマで話題提供があり,会場からも活発な議論がなされた。技術的必要性が新技術を生み出す契機となること,ユーザーの視点に立った物理探査の適用性について明確な説明が必要なこと,人材を物理探査・地球物理に限定せず自然科学全般から広く求めること,地下の状態を継続して可視化するモニタリングが重要であること,などの意見が提案された。