2013 年 66 巻 4 号 p. 261-275
新潟県長岡市にあるCO2地中貯留実験サイトにおいてゼロオフセットVSPを実施した。計測に利用した坑井はCO2の到達が確認されている2本の観測井で,それぞれがCO2圧入井から離れる方向に傾斜している。両方の坑跡の地表投影位置はほぼ直線となり,この直線上でP波を起振し両坑井で同時に観測した。観測データには,球面発散補償,上方・下方伝播波の分離,デコンボリューションおよびコリドール重合などの基本的な処理を適用しVSP合成反射記録を得た。
検層で得られたP波速度と密度の結果をもとに反射係数列モデルを作成し,計測現場の状況に合わせた反射記録を計算で求め,この波形とVSP観測データを処理した波形とを比較した。その結果,デコンボリューションと狭いコリドールウィンドウの両方を適用して処理したものが検層から計算した反射記録に近い波形となった。また,過去に行われた三次元反射法探査の記録とVSPの記録とを比較し,反射法探査結果に28msecの時間シフトを与えることによりVSPと反射法に認められる貯留層近辺でのイベント波形がよく一致した。この時間シフト値を用いて三次元反射法探査記録を再解釈した結果,CO2貯留層の三次元的な広がりと層厚の変化が明らかになった。さらに,CO2圧入前後の物理検層データを用いて計算したVSP反射記録の検討から,CO2圧入前後にVSP測定を実施すればCO2の存在を検知する可能性を示唆できた。
以上のことから,VSPは三次元反射法探査の精度向上に寄与し,地下でのCO2挙動を把握するためのモニタリング手法としての有効性が示唆され,CO2地下貯留における有力な物理探査手法として期待できる。