物理探査
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ケーススタディ
福岡県那珂川町・安徳台遺跡群の地中レーダ探査
水永 秀樹井上 敬夫
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2013 年 66 巻 4 号 p. 287-294

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抄録

 福岡県那珂川町の安徳台遺跡群において,地中レーダによる遺跡探査を3つの調査区(A,B,C)で実施した。調査区域の総面積は2,800m2で,Sensors&Software社のNoggin Smart Cart Systemを用いてプロファイル測定を実施した。BおよびC調査区では顕著な反射応答は見られなかったが,A調査区では浅部および深部に明瞭な反射応答を確認することができた。A調査区の浅部では,深度0.2mに周辺に較べて反射強度の強い大規模な区域を検出することができた。この区域は,周辺の境界面と0.2m程度の段差があり,周囲と較べて高くなっていることがわかった。このことから,この区域は周辺から人工的に区別された住居区画であると推定した。また,この区域の周辺部には深度0.9mに直径1m程度の大きさの反射応答が多数確認できた。これらの反射応答は,約5.5mの等間隔で直線的に並んでいることや,反射応答の深度(0.9m)や規模(直径1m)が同等であることから柱穴跡または礎石と推定した。またこの住居区画と推定される区域内にも,約0.9m深度に前述とほぼ同様の柱穴跡または礎石と考えられる局所的な異常を多数確認することができた。住居区画内の柱穴跡または礎石と推定した局所的な異常も,約5.5mの等間隔で直線的に配置されている。これらの柱穴跡と思われる反射応答の周囲には地層境界面の窪みが見当たらないことと,反射応答の規模を考慮するとこれらが個々の竪穴式住居跡とは考えにくい。安徳台遺跡群では,弥生時代の遺跡の他に奈良時代の大建造物群や室町時代の館跡も発見されていることから,柱穴跡の反射応答が確認された箇所には何らかの大規模な建造物が存在した可能性が高いと推定できる。

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© 2013 社団法人 物理探査学会
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