物理探査
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論文
弾性波の減衰を利用したCO2地中貯留モニタリングの可能性
東 宏幸薛 自求松岡 俊文
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2015 年 68 巻 1 号 p. 13-22

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抄録

  CO2地中貯留プロジェクトにおいて地中でのCO2挙動モニタリングはプロジェクトの安全性評価にとって重要な事項である。モニタリング手法のうち弾性波を用いたものは最も信頼ある手法として内外の多くのプロジェクトで実施されてきている。しかし,これまで弾性波速度の利用は多くの実績があるが,弾性波のもうひとつの重要な属性である振幅減衰の利用はあまり行われていない。本論文では,減衰の利用を目指して,CO2飽和度と減衰の関係を定量的に求めている。これによって,将来のCO2排出権取引などのために地下のCO2の量を,モニタリングから定量的に評価する必要が生じた場合,速度に加えて減衰も利用できることになり,より精度を上げることができる。最初に,CO2が間隙中に部分的に分布(部分飽和状態)する時のCO2飽和度と弾性波速度の関係について示し,その関係を用いてCO2飽和度と減衰の関係を標準線形固体モデル(Standard linear solidモデル)を仮定して理論的に求めている。この結果を長岡サイトでの検層結果に適用して減衰の予想を行った。次にこのモデルと計算方法の妥当性を検証するために既往の室内の実験データセットにそれらを適用した。モデルと計算から理論的に減衰を求め,減衰の実測値と比較した。結果は,両者は良い一致を示し,モデルと計算方法の妥当性を確かめることができた。求めたCO2飽和度と減衰の関係を見ると小さなCO2飽和度で大きな減衰を示している。この現象は減衰が地下のCO2飽和度の定量的評価に加えて,もう一つのモニタリングの重要な目的であるCO2漏洩の監視にも使える可能性があることを示している。それは減衰により小さなCO2の量を検知できるため漏洩の初期段階での発見が可能になるためである。

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© 2015 社団法人 物理探査学会
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