物理探査
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論説
空中重力偏差法探査の概要と現状
千葉 昭彦Carlos Cevallos
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2016 年 69 巻 1 号 p. 5-17

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抄録

 空中重力偏差法探査は重力探査の一種で,航空機に搭載した重力偏差計で測定した重力偏差の分布から地下の密度構造を推定する探査法である。重力偏差はベクトル量である重力異常の3成分を空間偏微分した9成分からなるテンソル量であり,重力異常より密度の変化に対する感度が高い。重力探査に用いる重力計は重力異常の鉛直成分しか計測できなかったが,重力偏差計はデータ処理により重力偏差テンソルを確定させる6成分と重力異常の鉛直成分を取得できる。しかも,航空機計測を行うので,山岳地域のような地表からのアクセスの難しい地域や海上でも詳細な調査を行うことができる。1980年代以降に開発された実用的な空中重力偏差計により資源探査分野を中心に空中重力偏差法探査が海外で普及し始めた。日本国内でも2013年に地熱ポテンシャルを評価する目的で空中重力偏差法探査が導入された。
 現在,商用的に使われている空中重力偏差計の基本装置は,回転する円盤に載せた4個の加速度計で重力偏差の水平成分1成分と水平曲率成分1成分を測定する。この2種類の測定値はフーリエ変換法や等価ソース法を使って重力偏差テンソルの6成分や重力異常の鉛直成分に変換される。地下の密度構造を把握し易い鉛直重力偏差や重力異常の鉛直成分を使って定性的な解析を行うことが多いが,それ以外の重力偏差成分を特殊なフィルタ処理や3次元密度構造逆解析に用いることでより高度な解析を行うことができる。
 空中重力偏差法探査は,航空機の使用料も含めて探査費用が高い,天候に探査効率が左右され易い,日本国内では航空機への搭載許可に時間がかかる,起伏ある地形や地表構造物のために低空飛行が難しい等の欠点もある。しかし,広範囲を高精度に探査できる,陸上と同様に水上の探査を行うことができる等の利点は魅力的で,国内外の各分野で空中重力偏差法探査の適用が増えると期待される。

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© 2016 社団法人 物理探査学会
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