物理探査
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解説
岩石物性研究とCO2地中貯留 II:砂岩におけるCO2飽和度とP波速度変化
西澤 修張 毅薛 自求
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2016 年 69 巻 3 号 p. 195-214

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抄録

 解説 (I) では二酸化炭素 (CO2) 地中貯留に最適とされる,多孔質砂岩でのCO2貯留メカニズムを述べた。ポイントは,貯留層でのCO2の移動とトラップがキャピラリー圧と不均質に支配されることである。不均質のスケールは,孔隙から地層の堆積構造までのミクロからマクロにわたる。本解説では,前解説で述べた論点を引き継ぎ,医療用X線CTによるCO2飽和度と弾性波速度の同時計測実験の結果を議論する。実験で得られたCO2飽和度とP波速度との関係は非一意的で,結果は連続ランダムパッチモデル (continuous random patchy saturation model) で解釈される。モデルを理解するため,最初に流体を含む多孔質岩石の弾性的性質を記述する基本式と,ランダム不均質からの散乱による弾性波速度変化の基本式を扱う。次に我々の実験結果をこのモデルで解釈した例を紹介し,最後に実験とモデルによる解析で得られた結果を貯留層のモニタリングに適用する手法を議論する。以下が本解説のポイントである。1. 塩水を含む多孔質岩石の孔隙を占有するCO2クラスターが速度不均質を作る。2. P波速度とCO2飽和度の関係は複数の孔隙を占めたCO2クラスターのサイズに依存する。3. CO2クラスターと塩水との境界の流動によって発生するBiotの第2種の波がP波の散乱に大きく影響する。4. その結果,P波速度とCO2飽和度の関係はCO2クラスターが作る不均質の特徴的サイズと伝播するP波の波数によって変化する。5. 貯留層では孔隙中のCO2クラスターが作る不均質だけでなく,岩石や地層の不均質で生じたCO2の偏在による,よりスケールの大きい不均質も存在するため,これらを考慮したP波速度と飽和度の関係を議論する必要がある。

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© 2016 社団法人 物理探査学会
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