物理探査
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論文
日本の地熱資源ポテンシャル調査への空中物理探査の適用性
千葉 昭彦亀山 正義毛利 拓治代田 敦石川 弘真近持 雅春Jackie Hope
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2017 年 70 巻 p. 96-109

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抄録

日本国内の地熱資源ポテンシャルの調査に,空中重力偏差法探査,時間領域空中電磁探査および空中磁気探査を適用した。空中重力偏差法探査により詳細な探査結果が得られ,熱源となる可能性がある貫入岩を示唆するような高鉛直重力偏差異常の近傍に,地熱貯留層を発達させる断裂系に関連する可能性のある線状あるいは環状の重力偏差リニアメントが示された。空中電磁探査で得られた低比抵抗異常と空中磁気探査で得られた低磁気異常が地熱兆候の指標である帽岩や熱水変質帯の分布を示唆しているケースがあることも示された。これらの空中物理探査で得られた個々の物性指標は必ずしも地熱兆候を示唆するものとは限らないが,物性指標が重複する場所は地熱資源ポテンシャルが高いと考えられる。これらの結果に坑井での温度情報を利用した温度構造を組み合わせることで地熱資源ポテンシャルの評価が可能になる。

地熱兆候に関連する物性指標を抽出しやすくするため,個々の手法でフィルタ解析や逆解析手法の検討が行われ,各手法の特性や留意点も明らかになった。

日本国内で空中物理探査を行う場合には,いくつかの考慮すべき社会的事情があるものの,地表条件にかかわらず広い範囲を詳細かつ均質に調査して,調査地域全体を同じ条件でデータ処理・解析できるという特徴は空中物理探査の大きな魅力であり,地熱調査だけでなく他の分野への適用が期待される。

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© 2017 社団法人 物理探査学会
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