物理探査
Online ISSN : 1881-4824
Print ISSN : 0912-7984
ISSN-L : 0912-7984
論文
深層ニューラルネットワークを用いた物理探査結果の空間的補間
林 宏一鈴木 徹稲崎 富士小西 千里鈴木 晴彦松山 尚典
著者情報
ジャーナル 認証あり

2025 年 78 巻 p. sp16-sp32

詳細
抄録

 広域の浅部三次元地盤モデルを構築するために,深層ニューラルネットワーク(DNN)を用いて一次元のS波速度(Vs)構造を,表層地質や微地形区分などを参考にして三次元Vs構造に空間的に補間する手法を開発した。使用した物理探査データは,表面波探査および微動アレイ探査から得られた分散曲線,および単点三成分常時微動測定から得られた水平上下振幅比(H/V)である。分散曲線が存在する地点数はH/Vが存在する地点数に比べて少ないのでDNNは二段階とし,A)まず分散曲線から求めたVs構造を教師データとしてH/Vから一次元Vs構造を求め,B)次にこの一次元Vs構造を教師データとして座標や標高,表層地質や微地形区分などから三次元Vs構造を推定した。推定の流れは二段階のDNNを含む四つのステップにまとめられる。最初のステップでは,分散曲線とH/Vの両方が得られている地点において,分散曲線の逆解析により一次元Vs構造を求めた。二番目のステップでは,H/Vの測定のみを行った地点において,第一段階のDNN(A)によりH/Vから一次元Vs構造を求めた。ここでは,最初のステップで求めた一次元Vs構造とその地点におけるH/Vを,調査地の座標や標高,微地形区分などと併せて教師データとして用いた。三番目のステップでは前ステップでDNN(A)により求めた一次元Vs構造を初期モデルとして,H/Vを用いた逆解析によりモデルを修正し最終的な一次元Vs構造を求めた。最後のステップでは,第二段階のDNN(B)により調査地全域で一次元Vs構造を推定した。ここでは,これまでのステップで求めた一次元Vs構造と調査地の座標や標高,微地形区分や表層地質などを教師データとした。この手法を東京都東部から埼玉県南東部に適用し,200 m格子で深度90 mまでのVs構造を推定したところ,地形や表層地質,微地形区分と整合するVs構造が推定された。

著者関連情報
© 2025 社団法人 物理探査学会
前の記事 次の記事
feedback
Top