社会経済史学
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フランスにおける環境史研究の動向 : 社会経済史の観点から
中島 俊克
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2007 年 73 巻 4 号 p. 435-442

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抄録

近年フランスでも,環境史への関心が高まってきているが,ここにきて成果の刊行が相次いだ。その一端を以下に紹介することとしたい。自然環境の歴史というのは元来,きわめて長期にわたる微細な変化を対象とする分野で,地質学者・考古学者が活躍する舞台となっていたが,環境考古学がここ数十年の間に長足の進歩を遂げたことから,まず古代史家・中世史家が,ついで近現代を専門とする歴史家までもが多数参入するに至った。このあたりの事情はフランスでもあまり他国と変わらないが,そうした流れが地理学研究の伝統と結びついているのが,あえて言えばフランスの特色であろう。よく知られているように,フランスの歴史研究とくに社会経済史研究は元来,歴史地理学と密接な関係を有しており,筆者を含む経済史家の多くは自然地理学者と手を携えながら仕事をしてきた。現代の環境問題を反映させた研究を経済史家が行おうとするとき,この関係は大いに役立つこととなったのである。こうした伝統を受け,フランスの環境史研究はわずかな間に,ここで紹介するのが不可能なほど大量の地域モノグラフィを生み出してきた。そうしたモノグラフィの蓄積をふまえ,それらを一望の下に見渡そうとする総合の試みも出現し始めている。論文集や研究集会記録の刊行,包括的な性格の著作の出現,史料案内の編纂などである。それらのうちから,筆者がとくに重要と考えるものを以下にとりあげる。

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© 2007 社会経済史学会
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