社会経済史学
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14世紀後半フランス王国及びブルゴーニュ公領の財務官僚ニコラ・ド・フォントゥネ : 地方役人の社会的上昇の軌跡と富の蓄積(<第79回全国大会小特集>パネル ブルゴーニュ国家における財政システムの形成)
花田 洋一郎
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2011 年 77 巻 2 号 p. 157-172

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抄録

14世紀後半にヴァロワ朝ブルゴーニュ公国の初代フィリップ・ル・アルディに仕えて形成期における公国財政制度の確立に尽力した財務官僚ニコラ・ド・フォントゥネが本稿の対象である。彼はシャンパーニュ大市都市トロワの評議員・徴税役人としてその経歴をスタートさせた。ニコラはここで財務に関する才覚を遺憾なく発揮し,塩税徴収役人,租税総監督官などの役職を歴任して租税実務で実績を積み,特に塩税専門家として力を発揮した。その経歴が評価され1379年にはブルゴーニュ公国財政のトップである財務長官に,1380年にはフランス国王経常財政のトップであるフランス会計官にも就任し,フランス王国とブルゴーニュ公国との双方における財務長官の地位を兼任した。ニコラはこの立場を利用して,フランス王からブルゴーニュ公に対する年金や贈与を多く引き出し,振替・立替という会計処理を通じてブルゴーニュ公領財政の拡大に務めた。王国と公領という2つの巨大な財政実務に携わり,莫大な収入も得たニコラは,その財産を主に土地へと投資した。しかし家系的には恵まれず,その威光は実質的に2代で終わった。

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