社会経済史学
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1910年代~1930年代中頃における華北の銀行経営と貨幣制度
諸田 博昭
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2012 年 77 巻 4 号 p. 527-548

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抄録

本稿の目的は,1912年の北京政府成立から1935年の幣制改革に至るまでの時期を対象に,天津の市中銀行の銀行券の発行がどのように展開されていたかを分析することを通して,幣制改革の全国的な成功の要因を再考することである。北京政府期の銀行券の統一は,中央銀行としての機能が期待された中国銀行,交通銀行の銀行券が2度の大きな取り付けにあったことで頓挫し,多数の市中銀行が独自の銀行券を発行するようになる。その中で華北最大の市中銀行である北四行は,合同で四行準備庫を形成,法律よりもはるかに堅実な独自の規定に従って中南銀行券を発行し,天津の市中銀行の銀行券の大部分を占めるようになった。四行準備庫は,1927年11月に独自に保証準備を取り入れて後,上海での発行額が大幅に増加し,幣制改革を主導した上海の動向の及びやすい状態が形成されることとなった。四行準備庫のこれらの動向は,国民政府の統治や金融政策,アメリカの銀購買政策などの外部要因とは異なる局面で,幣制改革の全国的な成功の素地が出来ていたことを示唆するものである。

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© 2012 社会経済史学会
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