社会経済史学
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19世紀前半における東南アジア域内交易の成長 : シンガポール・仲介商人の役割
小林 篤史
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2012 年 78 巻 3 号 p. 421-443

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抄録

19世紀前半の西洋進出に伴うアジアの貿易の拡大は,いかにして引き起こされたのか。本稿では,19世紀前半の東南アジア貿易の拡大の一部は,シンガポールの仲介商人が中心的役割を担った域内交易の成長を基盤としたものであったことを示す。イギリスとオランダの植民地貿易統計を吟味した本稿の推計によれば,植民地を中心とした域内交易は,少なくとも1820年代以降,その中心を蘭領ジャワから英領海峡植民地,特にシンガポールへ移行させながら成長した。それには,オランダ植民地において,1824年英蘭協定を無視する形でシンガポールからのイギリス綿製品輸入に課された高関税率が,海峡植民地の利害に基づくイギリスの外交抗議によって引き下げられたという背景があった。それと同時に,シンガポールにおいて,西欧商人から綿製品を信用販売で購入した仲介華人商人たちが,協力関係にある中国系商人との継続的取引関係や,現地マレー人やブギス人商人との市場での取引によって,西欧綿製品を東南アジア各地に流通させたことも重要であった。

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© 2012 社会経済史学会
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