社会経済史学
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明治前期における清水港から横浜への製茶移出と清水廻船問屋
粟倉 大輔
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2013 年 79 巻 2 号 p. 147-167

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抄録

本稿の課題は,明治前期の清水港から横浜への製茶移出と,そのことに清水廻船問屋が果たした役割について検討し,以上を通じて,当時の清水港の実態と商品流通におけるその意義を明らかにすることである。清水廻船問屋とは,清水港で荷役などの港湾業務を担当していた回漕業者集団のことである。清水港を論じるには,製茶移出量などの数量データとともに,当時の彼らの活動も検討対象として必要なものである。本稿の分析により,清水港が全国的にも代表的な製茶移出港であったことや,その製茶移出を担っていたのが横浜の回漕業者や清水廻船問屋が出資した海運会社静隆社であったこと,製茶移出を通じて清水港が横浜輸入品の販路の起点にもなっていたことなどが実証された。そして,清水廻船問屋は清水港からの製茶移出の促進に必要な汽船導入や波止場建設に貢献した。また,当時の清水港の重要性を示しているように,清水廻船問屋のなかには静隆社の役員に就任しているものもいた。明治前期の商品流通において,清水港は横浜輸出入品の流通の結節点としての役割を果たしていたのである。

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