生活経済学研究
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生活経済学会第36回研究大会会長賞受賞論文
服薬における意図的/非意図的な消費中断行動の因果検証
櫻井 秀彦
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 51 巻 p. 107-118

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抄録

服薬アドヒアランスに関する先行研究では、様々な阻害要因が報告されている。しかし、飲み残しや服薬アドヒアランスの低さなどの問題は、医療現場では十分に解決されていないのが現状である。そこで本研究では、研究の注目度が高まっている意図的な中断と非意図的な中断の2つの次元の服薬非遵守行動に着目した。 2018年2月に、医療ニーズが高まる年齢である45歳以上の一般市民約3万人を対象に、患者意識と健康に関わる行動に関するインターネット調査を実施した。先行研究に基づいた意図的中断行動、非意図的中断行動、患者エンパワメメント(情報探索、知識習得、治療参画)等の構成概念を測定し、共分散構造分析で慢性疾患患者と急性期患者による母集団別分析を行った。 分析の結果、急性期患者では、非意図的中断から意図的中断への影響のみ有意であったが、慢性期患者では両者間での再帰的な影響が認められた。また、意図的中断と非意図的中断には影響要因に相違が見られ、慢性期と急性期では支援策の違いを検討する必要が示唆された。更に、過剰な知識習得意欲が、不適切な知識の取得などを介して意図的な中断に結びついている可能性も示された。よって、継続的な通院・服薬を要する慢性患者と、抗菌薬等で完全に飲みきる必要のある急性期の患者では、支援策など個別に検討する必要性が示唆された。

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