本研究の目的は,大気の質が人々の健康に重大な影響を及ぼしているルーマニア,イアシ市の都市環境の公害のレベルを調査することである.SO 2,NO2,NH3,および粉塵公害物質を12カ所の採取地点においてそれぞれ6年間にわたって測定した.統計解析の結果,大気汚染物質の濃度は低いものの,パクラリ地点においては,ソコラ地点や「鉄道駅」地点よりも高い値が観測された.さらに,NO 2に限っては,パクラリ地点とソコラ地点で,次にパクラリ地点と「鉄道駅」地点において有為な差が観られた.これらの観測地点のNO 2の濃度の変化に及ぼす交通量,風速,風向による影響は,14.2%以下にとどまった.汚染による影響が少なかった調査地点は,いずれも植生の豊富な場所であったことから,植生は公害のレベルを抑えるのに貢献していることもうかがえる.大気汚染に耐性のある樹種を植樹することをにより,公害ゾーンの植生面積を増大することが望ましい.さらに,大気汚染物質の濃度が予想外に高いゾーンにおいては,より多くの調査地点を設ける必用がある.