日本生気象学会雑誌
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原著
  • 西村 一樹, 玉里 祐太郎, 小野寺 昇, 長﨑 浩爾
    2024 年 61 巻 1 号 p. 9-17
    発行日: 2024/06/17
    公開日: 2024/06/27
    ジャーナル フリー

    大気圧変化と安静時の生理指標の関係性を3つの観点から検討した.1気圧を基準にした高低で比較する(課題1),1週間の大気圧の高低で比較する(課題2),前日からの大気圧の下降,一定,上昇で比較する(課題3).健康な成人男性42名を対象に仰臥位安静の測定を行った.測定項目は,心拍数,心臓自律神経系調節,血圧,酸素摂取量とした.大気圧は広島気象台のデータを用いた.1気圧を基準に低気圧と高気圧条件とした(課題1).5hPa以上の変化があった17例を対象に低値条件と高値条件を設定した(課題2).前日からの大気圧変化が5hPa以上の下降,上昇と変化が5hPa未満の3条件とした(課題3).2条件間の生理指標に有意な差は観察されなかった(課題1).高値条件の拡張期血圧,酸素摂取量は低値条件に比較して有意な高値を示した.心拍数,ln HF,収縮期血圧に2条件間に有意な差は観察されなかった(課題2).心拍数,ln HF,拡張期血圧は3条件に有意な差が観察された(課題3).本研究の知見から,大気圧変化は安静時生理指標に有意な影響を及ぼすことが明らかになった.

  • 永井 信, 斎藤 琢, 永山 滋也
    2024 年 61 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 2024/06/17
    公開日: 2024/06/27
    ジャーナル フリー

    気候変動と生物季節の対応関係の理解を深めるためには,従来とは異なる間接的な手法により様々な種を対象に長期的な生物季節モニタリングを行う必要がある.本研究は,岐阜県を対象に,サツキマス(Oncorhynchus masou ishikawae)と天然アユ(Plecoglossus altivelis)の月別の取扱数量データを解析し,河川の遡上季節や降河季節との関連性や,それらの経年変化の評価を試みた.アユの降河季節の時期:10月〜12月における年間総取扱数量に対する各月の取扱数量の割合は,モニタリング期間(1982年〜2021年)において統計的に有意な増加トレンドを示した.その結果,河川水温の上昇にともない天然アユの降河季節の時期が晩期化した可能性が示唆された.しかしながら,月別の取扱数値データとサツキマスの遡上季節には,有意な関係性はみられなかった.また,サツキマスの降河季節とアユの遡上季節については,月別の取扱数値データは禁漁期間を含むため解析が困難であった.卸売市場の取扱数量データは,各水系における取扱数量の変動,時間分解能や記録の誤り,市場動向を原因とした不確実性や系統的な誤差を含むが,生物季節の間接的な推定とその経年変化のモニタリングにおいて有用であることが示唆された.

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