日本生気象学会雑誌
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総説
  • 永島 計
    2025 年62 巻3-4 号 p. 45-51
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2026/02/10
    ジャーナル フリー

    本総説は、温熱感覚と体温調節の統合的理解を目指している。行動性体温調節の生理学的意義、温度受容分子メカニズム(TRPチャネル)から中枢神経系(視床下部・大脳皮質)に至る多階層の機構、ヒトの個体差(冷え性)および湿度感覚の新知見、さらに脳機能計測(fMRI・EEG)までを俯瞰する。動物実験では、深部体温維持における行動の役割が裏づけられている。ヒト研究では、温度感受性の個人差の問題が明らかにされている。温熱的快・不快の情動評価には、大脳の前頭前野・帯状皮質・島皮質が関与する。湿度もまた温度感受性に寄与する因子であるとともに、鼻腔粘膜の冷受容を介して知覚されている可能性が示されている。これらの知見は、熱中症予防、高齢者ケア、建築環境設計、産業安全、ヘルスケアデバイスの基盤になると考えられる

原著
  • 堀越 哲美, 加藤 里実, 長野 和雄, 兼子 朋也
    2025 年62 巻3-4 号 p. 53-69
    発行日: 2025/12/26
    公開日: 2026/02/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,永井荷風が著した『断腸亭日乗』を用いて,温熱感の体感記述がどのような環境でどのように使用されているかを明らかにすることである.「寒」は平均気温0℃以下の冬季中心に,「涼」は夏の最低気温が25℃以下の場合に出現する.「冷」は,「寒」と「涼」の狭間に出現する.「暖」は,冬季中心に平均気温5℃以上で出現する.「暑」「蒸」は夏の最高気温30℃以上で体感を生起させている.「風」は他語と併用され,中でも「寒」「冷」との併用が多い.堪え難い高湿度と高温の特別な表現も用いられる.2つの体感語の出現系列について相互相関係数を求めたところ,「寒」と「暖」,「涼」と「暑」,「蒸」と「暑」に同調的変動が確認された.「涼」と「暖」の用法は,先行研究における温度変化前を基準とする温度形容詞の使い分けと対応している.『断腸亭日乗』は遭遇する温熱環境への作者の鋭い感覚に基づき記述され,しかも人々に共通する的確な表現がなされている.

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