抄録
毎年早春の2月頃から5月頃まで,スギ花粉による花粉症が発生する.近年その患者数は増加する傾向にあり,大きな社会問題となっている.しかしながらテレビ,新聞などで報じられる花粉予報はかなり大まかなものである.わが国には,空間的に密な気象観測システムが展開されており,国内の植生についても詳細な調査が行われている.さらに,近年花粉症が社会問題化したことに対応して,いくつかの地方自治体によって、組織的な花粉捕集数の観測が始まり,データが蓄積しつつある.そこで,これらの情報を積極的に利用し,有機的に総合化することにより,従来よりも詳細な,スギ花粉飛散量分布の推定を行う手法ができないかと考えた.本報告では,気象条件とスギ花粉飛散量の関係について示すとともに,気象データとスギ森林データを用いて,詳細な花粉飛散量分布をシミュレートする方法について述べる.