日本生気象学会雑誌
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総説
我が国における熱中症の死亡統計
—どのような統計分類を使用すべきか?—
中井 誠一
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2019 年 56 巻 2 号 p. 67-75

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抄録

人口動態統計では「熱中症」という用語を用いた死亡統計の分類はなく,「傷病および死亡の外因」の中に,1994年までは「過度の高温(E900)」,1995年以降では「自然の過度の高温への曝露(X30)」と「人工の過度の高温への曝露(W92)」の項目があり,これらが外因としての暑熱による死者数と考えられる.厚生労働省 の広報資料においても「自然の過度の高温への曝露(X30)」を熱中症による死亡数とすると掲載されている.しかし,「損傷,中毒およびその他の外因の影響」の中に,1994年までは「熱作用(N992)」と「熱および光の作用(992)」,1995年以降は「熱及び光線の作用(T67)」の小分類として,熱射病や日射病などの熱中症の具体的な症状が示されているので,T67が傷害の性質としての熱中症死者数に相当すると考えられる.本研究ではこれらの統計分類について熱中症に関連する死亡数を比較した.1994年までは統計分類による死亡数に顕著な差は認められなかったが,1995年から2017年まではT67がX30よりも高値で,X30にW92を加算するとT67と X30+W92との差は小さくなった.これらは外因のコードであるE900が1995年以降ではX30とW92に分割して表示されたことが原因と考えられる.暑熱による死亡数を示す場合,自然の過度の高温による死亡数(原因による分類)を示すよりも,傷害の性質による死亡数を用いることが妥当と考えられ,熱及び光線の作用(T67)による死亡数が我が国における熱中症死亡数を示していると考えられる.

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© 2019 日本生気象学会
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