2022 年 59 巻 3-4 号 p. 115-122
愛知県豊橋市消防本部より提供を受けた救急搬送データより2013~2019年の6~10月において,熱中症の発生場所区分が「住宅」に分類されている60歳以上の熱中症搬送者を対象とし,1)搬送データに記載されている入電時間から熱中症による搬送件数をエアコン運転・停止別にまとめ,日内における搬送件数分布の特徴を明らかにし,2)熱中症の傷病程度分類(軽症・中等症・重症)よりエアコンの運転・停止と重症化(中等症以上になること)との関連性を調べた.結果,1)搬送データにエアコンが「停止」と記録されていたものについて,搬送件数は7時台から急激に増加し,9時台および13時台にピークを持つ分布となった.また中等症以上と診断された者は午後に比べ午前の方が多かった.午前中における搬送および重症者の多発の原因として,夜間または就寝中における熱中症発症の可能性に加え,救急要請の遅れにあることが考えられた.2)エアコンの運転・停止と熱中症の重症化との間には有意な関係があり,エアコンを使用することで重症化する確率をエアコン停止時と比較して平均26ポイント下げることが可能であることがわかった.