日本生気象学会雑誌
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寒冷曝露とラット肝臓チトクロームP-450活性
宮崎 良文高野 健人
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1984 年 21 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

長期間にわたる寒冷曝露が, ラットの肝臓チトクロームP-450活性と含量に及ぼす変化について調べた.チトクロームP-450活性と含量が短期寒冷曝露により変化を受けることはすでに知られているが, 長期にわたる寒冷曝露による変動については, ほとんど報告されていない.本実験においては, 4時間から60日間までのさまざまな期間における寒冷曝露 (4℃) が, ラット肝臓チトクロームP-450活性と含量に及ぼす変動を明らかにするため, アミノピリンN-脱メチル化活性, アニリン水酸化活性, チトクロームP-450含量, ミクロゾームタンパク質含量の4指標について測定した.
アミノピリソN-脱メチル化活性は, 曝露開始後12時間目において増加を示し (p<0.01) , 1日目から14日目まで対照群と同じレベルに戻り, 30日目に再び増加した (p<0.01) .45日目および60日目においては, 有意ではないが (p>0.05) , 対照群に比べ高い値を示した.アニリン水酸化活性は, 寒冷曝露後1日目に増加し (p<0.01) , 14日目に減少し (p<0.01) , 30日目に再び増加した (p<0.01) .45および60日目においては, やはり高い値を示す傾向にあった.チトクロームP-450含量およびミクロゾームタンパク質含量は, ともに24時間目に増加したが (p<0.01) , アミノピリンN-脱メチル化活性あるいはアニリン水酸化活性が変化を示した14, 30, 45および60日目においては有意な変動は観察されなかった (p>0.05) .
これらの結果は, アミノピリンN-脱メチル化活性, アニリン水酸化活性が, ともに60日間の寒冷曝露中, 変動していること, ならびにアミノピリンN-脱メチル化活性, アニリン水酸化活性, チトクロームP-450含量の曝露中におけるタイムコースが異なることを示した.これらはラットの寒冷馴化過程において, 肝臓のチトクロームP-450活性および総含量が曝露期間に応じて変化し, また分子種の分布も変動していることを示唆した.

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