日本生気象学会雑誌
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季節変化と珪肺患者の呼吸性アルカローシス
荒記 俊一本間 徹男
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1986 年 23 巻 2 号 p. 71-75

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抄録
近年注目されている集団の心因性全身疾患 (Mass psychogenic systemic illness) の前段階と考えられる無症候性 (Subclinical) の呼吸性アルカローシスの発生要因を検討するため, 珪肺 (またはその合併症) として労災認定され病院の外来で経過観察中の18人の男子 (50~77歳) の季節別の動脈血ガス・肺機能, 臨床検査・診察所見および自覚症状を解析した.
以下の結果が得られた. (1) 動脈血のpHは冬 (2月) と夏 (7月) が春 (5月) より統計学的に有意に高く, 炭酸ガス分圧は逆に有意に低かった. (2) そのほかの解析項目では血沈が冬と春が夏より有意に亢進し, 発熱の頻度が冬が夏より有意に高かった。
以上の結果より, 軽度の呼吸性アルカローシスは高年の珪肺患者の場合気候がより厳しい冬期 (低温低湿) と夏期 (高温高湿) に出現しやすいことが明らかになった.若年女子, 学童, 肺機能障害者など集団の要保護グループ (Vulnerable group) と呼吸性アルカローシス発生との因果関係について考察を加えた.
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