日本生気象学会雑誌
Online ISSN : 1347-7617
Print ISSN : 0389-1313
ISSN-L : 0389-1313
運動時の体温, 前腕発汗量及び前腕皮膚血流の関係
山崎 文夫曽根 涼子池上 晴夫
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 29 巻 1 号 p. 49-55

詳細
抄録

運動時の体温, 発汗及び皮膚血流の関係について検討するため, 男性6名に気温28℃ (相対湿度50%) の環境条件下で, 40%VO2max強度の自転車運動を40分間行わせ, 直腸温 (Tre) , 食道温 (Tes) , 平均皮膚温 (Tsk) , 前腕皮膚温 (Tarm) , 前腕局所発汗量 (Msw) , 汗の拍出頻度 (Fsw) 及び前腕皮膚血流 (LDF) を測定した.得られた結果は次の通りである. (1) 運動初期においてTreはTesよりも緩やかに上昇した. (2) TreとMswの関係の勾配は約37.8℃をbreaking pointとして変化したが, TesとMswの関係の勾配は変化しなかった.したがって, TreとMswの関係で認められたbreaking Pointは, 運動初期におけるTreの応答の遅れによって生じる見かけ上の現象であると考えられた. (3) 運動開始直後にTesとTskはまだ上昇していないのにもかかわらず, MswとFswは増加した.このことから運動初期の発汗中枢活動には運動に伴う非温熱性因子が影響していると推察された. (4) 温熱性発汗の急増時点はLDFの急増時点よりも早期に出現した. (5) 運動初期にTarmは低下したのに対して, LDFはほぼ一定値を保ち, 両者の変化パターンに差異が認められた.以上のことから結論として, 運動初期を除けば運動時の発汗量及び発汗中枢活動は深部体温と密接に関係している.しかし, 運動初期には非温熱性因子が関与していることが示唆された.

著者関連情報
前の記事
feedback
Top