日本生気象学会雑誌
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高体温時のヒトの熱放散反応と核心部体温の相関
平下 政美永坂 鉄夫田辺 実
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1993 年 30 巻 1 号 p. 33-38

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抄録

7名の健康成人男子を被験者とし, 28℃-40%の人工気象室内で, 加温装置を用い頭部を除いて全身を加温しな時の鼓膜温 (Tty) , 食道温 (Tes) , 平均皮膚海 (Tsk) , 平均体温 (Tb) , 前額の皮膚血流量 (Qsk) と発汗量 (msw) , 眼角-眼静脈の血流量 (Qov) を連続測定し, Ttyとそれら熱放散量の相関について解析した.Tskは全身7ヶ所の皮膚温から算出した.ほとんどの被験者で, Tty, Tesは温熱負荷開始直後にわずかに下降した後ほぼ直線的に上昇した..遅れてQskmswも増加したが, Ttyが37.24℃あるいは37.47℃を越してからは, それぞれQskとmswの増加率は減少し, 中にはそれ以上殆ど変化せずに同じ値を保ったもの (plateau 形成) もあった.Ttyの上昇に対する熱放散量の増加率が減少した (時にはplateauに達した) 後Qovは著しく増加した.このような高体温時にはTskはほぼ一定の高値を維持した.以上の結果から, ヒトでは, 皮膚温が高く, もはや鼓膜温の上昇に対し熱放散反応の増加が起こらないplateauを形成する温度範囲では, 選択的脳冷却機構により他の核心部体温とは独立して脳温が低下しても熱放散反応は実質的には阻害されない可能性が示唆された.

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