2008 年 15 巻 2 号 p. 93-99
食塩水を電気分解して生成される陽極から得られる強酸性電解水は,有効塩素を含有し,殺菌剤として広く使用されている.一方,電気分解の過程で,同時に陰極から生成される強アルカリ性電解水はあまり知られていない.強アルカリ性電解水はpH11.3程度で,主成分は水酸化ナトリウムであることから,食品加工場で使用されている洗剤と洗浄効果および,排水汚染度合いについて検証した.その結果,床洗浄において強アルカリ性電解水の汚染除去率(79%)は洗剤(61%)と同等の効果を有した.また,排水汚染の観点から重要な指標となる,生物学的酸素消費量(BOD)と化学的酸素要求量(COD)を比較した結果,強アルカリ性電解水(COD2.7mg/L,BOD検出不能)は,一般的に使用している洗剤(COD160-19,000mg/L,BOD78-2400mg/L)より環境負荷が少ないことが明らかになった.これらのことより,洗浄効果が洗剤と同等で,環境負荷低減効果が得られる強アルカリ性電解水は洗剤の代替として,今後の利用が期待できることが示唆された.