農業生産技術管理学会誌
Online ISSN : 2424-2403
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15 巻, 2 号
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  • ブンヤリットンチャイ パニダ, マヌオン シカナット, カンラヤナラット シリチャイ, 松尾 友明
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    安定した作物生産にとって,環境ストレスの克服は重要な課題である.特に,近年,高温ストレスと作物の応答に関して,多くの研究がなされている.幅広い範囲の高温は自然および人工的な環境の両方において,様々な作物に種々の影響を与えることが知られており,熱ストレスは作物の生産性に関連する重要な要因の1つである.55℃を超える高温は多くの種類の植物細胞において熱損傷やネクロシス的な細胞死を引きおこす.しかし,適度な高温は,耐熱性に加えて,様々なストレス耐性を向上させる,たとえば,低温,乾燥,高濃度の塩,病気などである.シロイズナズナの懸濁培養細胞をモデル系として利用して,45℃1時間処理という比較的温和な条件の熱処理の植物細胞に与え,形態学的生化学的影響を調べた.卓上型走査顕微鏡で観察すると,この温和な熱処理が24時間後に細胞の崩壊と収縮を引き起こすことが明らかとなつた.また,クロロフィルの減少,細胞活性の低下も合わせて認められた.そして,プログラム細胞死の指標としてよく注目される,カスパーゼー3一様タンパク質分解酵素の活性増加に加えて,ゲノムDNAの分解もアガロース電気泳動法で検出された.耐熱性の向上に関する反応を明らかにするために,各種阻害剤の効果を調べたところ,カルシウムイオンの流入を阻害する試薬が顕著にクロロフィルの減少と細胞死の遅延を誘導した.最後に,この温和な熱処理によって変化する核内タンパク質の同定を試みた.これらの結果,高温下で生育するために必要な植物応答の一部を明らかにして,今後の作物の改良につながる成果を得たと考えられる.
  • 李 家華, 周 紅傑, 清水 圭一, 坂田 祐介, 橋本 文雄
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    製造発酵過程における雲南プーアル茶のポリフェノールとカフェイン含量について,発酵期間を設定するため,雲南省鎮康県,双江県および景谷県の3地域で収集した日干しした緑茶(晒青緑茶)を発酵処理開始後10日毎に茶葉サンプルを採取し,分析を行った.(-)-エピガロカテキン3-ガレート(EGCG),(-)-エピカテキン3-ガレート(ECG),テオガリン(TG),ストリクティニン(STR),1,4,6-トリ-O-ガロイル-β-D-グルコース(1,4,6-tri-O-G-β-D-G)の5種の含量は発酵に伴って有意(1%レベル)に減少したが,40日以降のそれらの含量の減少の程度は小さくなった.また,(-)-エピカテキン(EC)と(-)-エピガロカテキン(EGC)含量は発酵開始後10日目までに増加し,その後急激に減少に転じた.これに対して,没食子酸(GA)含量は発酵40日目まで有意(1%レベル)に増加し,その後有意(1%レベル)に減少した.この結果,従来から報告されている,発酵中に微生物の産生するエステラーゼによってエステル類が加水分解を受けてGAが生成することを追認し,併せて加水分解型タンニンの加水分解もGA含量の増加に関係していることを初めて明らかにした.一方,紅茶の紅色色素であるテアフラビン類は検出されなかったことから,発酵によりプーアル茶に生成している色素類は紅茶のものとは異質のものであることが明らかとなった.カフェイン含量は発酵に伴い徐々に増加し,発酵開始後60日目には最高値となった.以上の結果から,プーアル茶製造における発酵期間は40日間で十分であると結論づけられた.
  • 紙谷 喜則, イッサザカリア アブドゥルスディ, 比恵島 裕美, 守田 和夫, 八木 史郎
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 81-85
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    本報では,強酸性電解水の殺菌の機序を酸化還元電位に着目し,殺菌における役割を示すことを目的に行ったが,pHと有効塩素濃度を同等に調整した場合の酸化還元電位は調整水の方が低い傾向にあったにも関わらず,殺菌速度は速い結果となった.この時の殺菌の速度は有効塩素濃度に影響されていることから,殺菌の主因は有効塩素濃度であることを確認した.しかし,調整水と強酸性電解水では,強酸性電解水の殺菌速度が速い傾向は10,15,20mg/Lともに確認された.サンプル水と菌液と混合した後に強酸性電解水のみの酸化還元電位が上昇した.この現象は,フェントン反応による・OHの生成と同様の挙動であり,電気分解過程により生成した何かが起因し大腸菌細胞液に含まれる金属イオンと反応したと推測した.強酸性電解水の殺菌の機序として細胞膜が破壊し細胞液が流出したことにより,その細胞液内にある金属イオンと何らかの電気分解による生成物質が反応し,殺菌速度を上昇させた可能性があると推察した.
  • 安東 千晶, 石田 章, 横山 繁樹, 会田 陽久
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    This paper discusses who are more likely to frequently do gardening, with special attention to the relationship with childhood growth environment. The statistical analysis, based on the individual data obtained from the Japanese General Social Survey 2002 (JGSS-2002), clearly suggests that persons fulfilling the following conditions are more likely to do so: (1) they are female, elder (except 80s), higher income earners, and read newspapers frequently; (2) they resided in rural areas in their childhood, and came from farm households.
  • 紙谷 喜則, イッサザカリア アブドゥルスディ, 比恵島 裕美, 守田 和夫, 八木 史郎
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    食塩水を電気分解して生成される陽極から得られる強酸性電解水は,有効塩素を含有し,殺菌剤として広く使用されている.一方,電気分解の過程で,同時に陰極から生成される強アルカリ性電解水はあまり知られていない.強アルカリ性電解水はpH11.3程度で,主成分は水酸化ナトリウムであることから,食品加工場で使用されている洗剤と洗浄効果および,排水汚染度合いについて検証した.その結果,床洗浄において強アルカリ性電解水の汚染除去率(79%)は洗剤(61%)と同等の効果を有した.また,排水汚染の観点から重要な指標となる,生物学的酸素消費量(BOD)と化学的酸素要求量(COD)を比較した結果,強アルカリ性電解水(COD2.7mg/L,BOD検出不能)は,一般的に使用している洗剤(COD160-19,000mg/L,BOD78-2400mg/L)より環境負荷が少ないことが明らかになった.これらのことより,洗浄効果が洗剤と同等で,環境負荷低減効果が得られる強アルカリ性電解水は洗剤の代替として,今後の利用が期待できることが示唆された.
  • チャンドラ デュラル, 松井 年行, 鈴木 晴雄, 小杉 裕介
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 101-108
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    レタス(品種シスコ)を11月から5月まで毎月収穫し,レタスの品質,アンモニア含量やアンモニア同化酵素における季節の温度変化の影響について検討した.葉の組織に対する高い破断強度は,寒い収穫月にはより品質が低くなった.レタスのすべての部位において,アンモニア含量は,寒い時期で有意に増加した.温度が減少し,再び上昇したときレタスの緑色葉部位のグルタミン合成酵素(GS)活性は増加したが,収穫月を通してレタスの白色葉部位と中肋部位での有意差は,認められなかった.3月を除いて,レタスの緑色葉部位のグルタミン酸脱水素酵素(GDH)活性は減少し,一方白色葉部位において,GDHアミノ化活性は一定に保たれた.しかしながら,GDH脱アミノ化活性は,収穫月を通して一定に保たれた.GDHアミノ化活性は,すべての部位で脱アミノ化活性よりも著しく高く,アミノ化はアンモニア同化においてより重要な役割を果していると示唆される.
  • 宮本 眞吾, 世良田 和寛
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究は,食品厨芥を乳酸発酵させた豚のリキッド飼料とその飼料で飼育された豚の糞尿を固液分離した液状分を混合し,これを投入液としたメタン発酵について実験を行った。発酵槽は実容積8,500mlで,発酵温度制御のため投入型ヒータを入れ,発酵槽内の攪拌方式はガス攪拌方式を用いた。飼料の割合を10,20,30%に変えて糞尿と混合し,メタンガス発生量,消化ガス収率,有機物除去率などを求め,投入液の適正な割合について検討した。乳酸発酵した飼料のpH値はかなり低く,メタン発酵に適切なpH値に調整することは困難であった。しかし,消化液のpH6.1程度でもメタン発酵が可能で,飼料20%の投入液の最大消化ガス収率127l/kg・VS,平均66.9l/kg・VSが得られた。pH調整した飼料30%の投入液では平均有機物負荷2.0kg・VS/m^3/日となり,平均消化ガス収率83l/kg・VSであった。メタン濃度は57vol%で乳酸発酵飼料と固液分離糞尿液を混合した投入液においてメタン発酵が可能であることが分かった.
  • 池浦 博美, 五味 正志, 百野 直実, 早田 保義
    原稿種別: 本文
    2008 年 15 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2008/11/15
    公開日: 2019/04/15
    ジャーナル フリー
    アブラナ科野菜の害虫モンシロチョウに対する生物農薬の開発を目的として,その産卵選好強度と同科植物の誘引並びに産卵刺激成分について調査した.モンシロチョウの産卵選好は,ワサビが最も高く,次いでキャベツ及びギョボクの順となり,レタスはほとんど認められなかった.誘引成分と推定されるアリルイソチオシアネート(AITC)の含量は,ワサビが最も高く,次いでキャベツとなり,ギョボクおよびレタスでは検出されなかった.また,産卵刺激成分であるシニグリン含量はAITCと同様の傾向となった.このことは,アブラナ科においてモンシロチョウの選択強度と同科の誘引・産卵刺激成分との関連性並びにギョボクにおける新規誘引・産卵刺激成分の存在を示唆するものとなった.
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