2015 年 21 巻 4 号 p. 101-111
食料のように一般に購入頻度の高い非耐久財の需要分析では,多くの既存研究で用いられてきた年次,四半期次,あるいは月次データよりも,日次データを用いる方が現実の消費者行動をより正確に反映することができる.その際,価格や人口統計的変数などの日次データを利用できないという不利を克服するため,エンゲル曲線を対数2次型の状態空間モデルとして定式化し,カルマン・フィルターにより推定した.状態空間モデルは回帰モデルよりも柔軟性が高くデータの説明力に優れており,回帰モデルでは説明しきれない食料の支出比率の変動を捉えることができた.日次データを用いて推定した本稿の支出弾力性と月次データを用いて推定した既存研究の支出弾力性を比較すると,本稿の結果の方が明らかに非弾力的であり,ミクロ経済理論と整合的であった.また,食料需要に対する月,曜日,祝日,年末年始などの効果は消費者一般の実感と矛盾しないものであった.