水稲多収性品種を異なる窒素施肥レベルで圃場栽培を行い乾物生産,収量と収量構成要素,窒素蓄積量と窒素利用効率の品種間差を検討した.試験は岡山大学農学部附属農場内の水田で2011年と2012年に栽培を行った.2011年は6品種,2012年はさらに2品種を加えた8品種を供試し,各品種とも緩効性肥料を用いて3段階の窒素施肥レベル(0N: 0 gN m^<-2>; 1N: 8 gN m^<-2>; 2N: 16 gN m^<-2>)で栽培を行った.2ヵ年とも施肥レベルの増加とともに,すべての品種で乾物重が大きくなった.収穫期の全乾物重はタカナリと北陸193号で最も大きくなった.タカナリは両年ともに2N区で窒素蓄積量が最も大きくなった.タカナリの玄米収量は2ヵ年とも1N区で最も高く(750,731 g m^<-2>),ついで北陸193号(669 g m^<-2>,1N区,2012年)で高くなった.いずれの窒素利用効率も,窒素施肥量の増加とともに小さくなり,品種間では北陸193号とタカナリが高い値を示した.両品種とも0N区の収量が他品種に比べ高い値を示し(589,562 g m^<-2>,2012年),これにはシンク形成能(シンク容量/幼穂分化期の窒素蓄積量)が高く,シンク容量が大きくなったことが関係していた.以上より,高い収量は大きなシンク容量,高い乾物生産・窒素利用効率によってもたらされ,これらにはシンク形成能が高いことが関係していた.
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