本研究では,洪水が起こりやすい米生産地域であるラオスのチャンパサック県サナソンボウン地区で低地米生産農家の農家経済およびフードセキュリティにおける洪水の影響について評価を行う.洪水年および標準年における世帯収入およびフードセキュリティについて2時点の比較分析を行ったところ,洪水は世帯消費用の米の生産能力および農家の生計に負の影響を与えることがわかった.洪水年の農家世帯の現金収入は標準年に比べ約24%減り,フードセキュリティを満たしていない農家割合は標準年の8%から16%に上昇したことを確認した.また,洪水で発生した影響への対処のため, 50%近くの農家が友人や親戚からの食料や金銭の助けを頼りにしていることもわかった.これらから,洪水が起こりやすい地域において政府は灌漑システムを改善する,ライスバンクを設立する等の事前対策に努める必要があると考えられる.