農業生産技術管理学会誌
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栽培時期と熟度がミニトマト'Petit'の品質と生理的特性に及ぼす影響ならびに収穫時の損傷に対する応答反応
阿部 一博宮原 晋作和田 光生平井 宏昭黒岡 浩
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2000 年 7 巻 2 号 p. 65-73

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抄録

緑熟果,催色果,着色果の3段階の熟度のミニトマト果実の品質や生理的特性に対する熟度ならびに栽培時期の影響を調べるとともに,物理的損傷に対する応答反応の差異を調べた.滴定酸含量:いずれの熟度においてもゼリー部の滴定酸含量は果肉部より多く,両部位の滴定酸含量に対する栽培時期の影響は小さかった.また,両部位とも催色果の滴定酸含量が緑熟果や着色果より多い傾向がみられた.糖含量:いずれの栽培時期でも着色果の含量が最も多く,緑熟果の含量が最も少なかった.8月収穫果の含量が最も多く,その後気温の低下とともに少し減少した.また7〜8月の果実では果肉部の含量がゼリー部より多かったが,冷涼期の果実では両部位の差は小さかった.遊離アミノ酸含量:ゼリー部の含量は果肉部より多く,催色果の含量が最も少なかった.7月収穫果の含量が最も多く,その後は減少した.CO_2排出量:収穫直後のCO_2排出量が最も多く,保持8時間後には減少して32時間後までほぼ同じレベルで推移した.収穫直後のCO_2排出量は緑熟果が最も多く,着色果が最も少ない傾向がみられた.C_2H_4生成量:緑熟果では7月と8月の収穫直後にわずかにC_2H_4生成がみられたが,保持8時間以降は生成がみられなかった.10月と11月の緑熟果では収穫直後でもC_2H_4生成はみられなかった.7〜8月中旬では,催色果のC_2H_4生成量は保持中に減少する傾向がみられたが,着色果より少なくなることはなかった.両果実とも8月下旬から冷涼になるにしたがってC_2H_4生成量は減少し,11月の果実の生成量は非常に少なかった.物理的損傷に対する生理的応答反応:栽培時期に関わらず,切断によってCO_2排出量は増加した.また,切断によって増加した緑熟果のCO_2排出量は保持中に減少したが,他の切断果実では保持中の変化は少なかった.3段階の果実とも切断によってC_2H_4生成量は増加し,増加は催色果て最も顕著で,着色果の増加が最も少なかった.切断によって増加したC_2H_4生成量は,保持32時間後には減少した.切断によってC_2H_4生成量が増加する傾向はいずれの栽培時期でもみられたが,冷涼期に収穫した果実における増加が最も少なかった.

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© 2000 農業生産技術管理学会
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