2020 年 27 巻 1 号 p. 155-160
我が国におけるスポーツタレント発掘は全国的に実施されているが,その発掘方法において,まだ科学的知見が不十分である.よって,遺伝的影響が大きいとされる身長のトラッキング効果について検証することは,発育発達期の子どもを対象としたタレント発掘を行うにあたって,非常に有用な情報である.そこで本研究は,特に低身長のトラッキング状況を縦断的資料から検証することで,低身長スポーツ選手のHuman resource 要素を探ることにした.方法として,小学1 年時から中学3 年時までの縦断的身長発育データから,ウェーブレット補間法を用いて身長加齢評価チャートを作成した.そしてこの評価チャートを用いて,中学3 年時において低身長と判定された者が,発育プロセスでどのような推移があったか分析した.その結果,男女ともにかなり高い割合で低身長はトラッキングすることが示された.これらのことから中学3 年時に低身長と判定される者は児童期でも予測することが可能であり,低身長スポーツ選手を発掘するための一資料となることが考えられた.