2020 年 27 巻 1 号 p. 149-154
2020年4月1日から, 日本政府が推進する働き方改革の一環として, 同一賃金同一労働に関する諸法が施行される. これは, 一般的には, 正社員と非正規社員との待遇格差を是正するための方策として述べられ, 日本企業が行ってきた「日本的経営」の一角を担ってきた年功序列制賃金制度に変革を要請するものとして捉えられている. しかしながら, この変革は, 日本経済が抱える労働者不足という状況によって強いられた, いわば, いやいやながらも受容しなければならないものであるかのように述べられることがある. 本稿では, エージェンシー理論における従業員に対する報酬, あるいは人事管理についての議論を参照しながら, 年功序列制賃金制度の効果を検討し, この制度の変革には何が必要であるかを考察する.