2016 年 68 巻 3 号 p. 183-187
ハイドロゲルは,生体に近い性質をもつことから再生医療における細胞足場としての利用が期待されている.また表面の微細構造により細胞接着性が変化することが知られており,様々な微細構造をもつ足場の研究が注目されている.微細構造の中でも,生体内組織の筋線維,神経線維などと同様の階層構造を有する束状構造体は,強度の強さ,複雑な三次元構造から,人工臓器の作製において有用な構造であると考えられる.しかしハイドロゲルで束状構造体を作製する場合,線維を撚り合わせて作製する方法では,ゲルの強度の問題から作製は困難であり,別の方法を検討する必要がある.本解説では,マイクロ流体デバイスと相分離現象を示す瞬時架橋可能なポリマーブレンド溶液を利用することによる,細胞足場のための束状構造ゲルの形成と再生医療への展望について我々の研究成果を紹介する.