産業革命がスタートする十八世紀の末に生まれたピアノは,十九世紀において一種の工業製品として改良を重ねられ,今日の形になった.どんどん鋼鉄製の部品を用いるようになり,自動車と同じように統一規格で大量生産されるようになる.その際に大きな役割を果たしたのがアメリカのスタインウェイである.20世紀のとりわけ後半において,木製部品を多用するヨーロッパの小さなピアノ工房はどんどん淘汰され,スタインウェイ的な鋼鉄のピアノ・モデルが世界統一規格となっていったのである.
カメラの画面サイズと写真の画質,描写の関係に関して考察する.手持ち撮影が可能な銀塩フィルムカメラとして,これまでに様々なフォーマットの画面サイズが考案され,発売されてきたが,結局フルサイズと呼ばれる24×36mmのサイズ以外はほぼ廃れてしまった.デジタルになっても高級機はこのサイズに回帰している.このことに関して考察するための基盤として,カメラの画面サイズと画質,描写の関係を,光学系と撮像素子の観点から整理する.
本稿では2024年度の文化×工学研究会の実施報告を行う.加えて,同会での講演を契機として企画がはじまり,2024年度に実現に至った駒場第二キャンパスにおける「駒Ⅱ(コマニ)音楽祭」について紹介する.駒Ⅱ音楽祭では「科学と芸術,目指すところは同じ」との発想のもと,年4回,日本を代表する音楽家の方々を招聘しての公演を実施する.駒場第二キャンパスに科学と芸術が近くにある環境をつくることにより,長期的な人材育成を目的としている.
2023年度に開講し,文系・理系を問わず,東京大学教養学部(1-2年生)を対象に開講した「リベラルアーツとしての工学」講義について,開講の背景と共に講義概要を記載する.東京大学生産技術研究所教員による独自の講義であり,研究者自身が語るという点で,従来の科学史講義とも一線を画するものである.新たに大学院生も受講対象となる2025年度Aセメスターを前に,これまでの活動を総括する.
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