ポリジアセチレン(PDA)は,共役主鎖のねじれによって力を検知し,色変化や蛍光発光を示すメカノクロミックポリマーである.このPDAの青から赤への転移する特性を利用した温度,イオン,生体分子などの検出を目的とした様々なバイオセンサーが実証されている.2018年,杉原グループはナノスケールでのせん断力を定量化する技術である摩擦力顕微鏡の精度を向上させ,この技術をPDAに初めて応用することを実証した.Zhengらは,pHとNaClによるPDAの力感度を上昇させる効果を明らかにした.しかし,pHとNaClの効果では力感度を完全に制御できず,製品化には依然として課題が残る.脂質膜はイオン選択性を有するため,他のイオンが力と蛍光の相関に与える影響を調査する必要がある.本研究では,イオンの種類がPDAに及ぼす影響を調査した.
心血管疾患は現在,世界的に主要な死因となっております.診断や治療において著しい進歩が見られる一方で,特に心臓と脳の複雑な相互作用に関わる多くの根本的なメカニズムは,依然として十分に解明されていません.神経心相互作用は,生理的状態および病態状態のいずれにおいても,心臓機能の調節に極めて重要な役割を果たしております.本プロジェクトの主な目的は,神経細胞と心筋細胞間の相互作用について,現実的で制御されたマルチモーダル測定を実現するため,in vitroでの神経-心臓共培養を可能とするマイクロ流体プラットフォームの設計・開発を行うことにありました.
血流により血管内皮細胞表面に生じるシェアストレスは,血管機能の恒常性維持および血管疾患の発症・進展に関与する重要な力学刺激である.しかし,生体内では多様な要因が複雑に絡み合っているため,シェアストレス単独の血管内皮機能への影響を体系的に理解することは容易ではない.本稿では,血管内皮におけるシェアストレス応答の分子機構を概説する.併せて,同研究領域において用いられてきた代表的なin vitroモデルを,各モデルの有する特性に基づいて紹介する.これにより,血管内皮におけるシェアストレス応答を評価するための実験モデル選択の指針を示すとともに,高解像度な血管内皮応答解析に向けた今後の研究展開について論じる.
がん転移は血管系を介して進行する複雑な多段階プロセスであり,その分子機構の解明は新規治療標的の同定に不可欠である.近年,生体模倣システム技術(microphysiological systems: MPS)の発展により,従来の動物モデルや2次元培養系では再現困難であったがん微小環境における腫瘍と血管の相互作用を,血管内腔・血管内膜近傍・間質の各コンパートメントにおいて種々の生理学的条件下で可視化・定量化することが可能となりつつある.本稿では,血管の空間的位置に基づきがん転移の場である血管内腔・血管内膜近傍・間質の3層に分類し,各微小環境における細胞間コミュニケーションとそれを再現するMPS研究の最新知見を概説する.
マイクロニードルの確実な穿刺には皮膚抵抗を上回る荷重と速度を与えるアプリケータが不可欠だが,既存方式は性能の可変性,コスト,サイズの並立に課題がある.本研究では,交換式ラッチモジュールと斜め梁構造を導入し,安価・小型ながら多様な針仕様に対応可能な新型アプリケータを開発した.解析と実験の結果,応力分散による耐久性向上と,設計パラメータ操作による荷重制御性を実証した.本成果は,幅広いニードル仕様に柔軟に対応可能な穿刺技術として,その実用化に寄与する.
24本の生きた樹木を癒合させて形成した建築構造を対象に,6台の加速度計を用いた複数回の常時微動計測を行い,全24点の振動特性を取得した.測定データを統合しFDD法により固有振動モードを推定した結果,0.5〜0.7 Hz 付近で第一固有値が卓越し,第一固有ベクトルは広い周波数帯域で一貫した形状を示した.一方,第二固有ベクトルは入力の偏りや計測ノイズに起因する成分と判断された.半値幅法により第1モードの減衰比を ζ=0.16 と推定し,さらに固有ベクトルの自己相関から構造物の回転対称性に対応する特徴的な波数成分を確認した.
都市の人口密度と交通分担率の相関関係を全国的に洗い出し,MaaS地域類型とその適用範囲を導出した.筆者らがITSシンポジウム2023で提案したオンデマンド交通とカーシェアを組合せたRural MaaSモデルは,人口40万人未満の地方中小都市で,自動車分担率60%以上,公共交通分担率10%未満といった特徴を持つエリアに適用可能性が高いと考えられる.