1973 年 23 巻 5 号 p. 218-228
1971年8月より12月まで, 東部ネパール, アルン谷に沿った地域, バルン谷, およびセドアからディングラ, ジュンベシ経由でカトマンズまでの間で, 森林, 草地, 耕地雑草等の調査を行なった.ここではセドア付近の冷温帯域で見出された落葉広葉樹林を中心に述べ垂直分布帯についてもふれた, ネパールヒマラヤの冷温帯域(2500〜2900m)では, これまでの報告では, 日本でみられるような落葉樹林がなくツガ林もしくは常緑カシ林になっているとされてきた.しかし今回調査したマカルー山塊の南側の地域ではカエデ類を主とした落葉性の森林帯が発達していた.このアルン川上流域はネパールでも有数の多雨地域(年間約4000mmでネパールでの最多雨記録を持つ)と考えられているので, 湿潤ヒマラヤでは, このような落葉広葉樹林が成立する可能性があることを論議した.